皇帝目線の三国志、新鮮でした。
※以下、『三国志 Secret of Three Kingdoms』→『三国機密』で統一します
チャンネル銀河のコラムによると、→https://rekijin.com/?p=33289
2010年の『三国志 Three Kingdoms』で、原作をモデルにした作品は、ほぼ完成を見た観がある。よって、それ以降は切り口を変えた作品が作られる傾向にあるのだろう。つまり、普通の三国志演義に飽きちゃった人向けに、どんどんマニアックになっているということだ。
ということで、変化球的な作品として『司馬懿軍師連盟』や『三国機密』などが生まれているそうです。
皇帝の資質が斬新
これまでマンガやドラマでおなじみの三国志における漢王朝の皇帝像というのは、ちょっとアホぼんだったり品格がなかったりと、まあ曹家に滅ぼされてやむなし、と諦めもつく不甲斐ない印象でしたが、この『三国機密』での皇帝像は品格と徳が極めて高く、なんなら譲位された曹丕の方が若干哀れ、という演出が斬新でした。
大前提として、皇帝がニセモノであるという設定がこのドラマ最大の仕掛けで、極秘に皇帝の身代わりとして据えられた楊平という平凡な若者が、皇帝として成長するプロセスを通して、視聴者は皇帝という立場の過酷さ、閉塞感、難しさを理解し共感していきます。現代的感覚としては至って健全な信念(=乱世においては唾棄すべき軟弱な優しさ)を持つ楊平は、いかに犠牲を出さずに平和に導くか、大局を見て皇帝として何を選択するか、曹操と対峙し苦悩を繰り返します。
いつしか僧侶のような何事にも動じない達観した風格を身につけた皇帝=楊平に対し、檀健次さん演じる曹丕の器の小ささ、血を吐きながら嬉々として玉璽を手にする哀しさが何とも対照的な演出になっていました。ダサさを演技で見せられる檀健次さん、いい役者さんだなーと思いました。
『司馬懿軍師連盟』と並べてみて・・・
『司馬懿軍師連盟』と『三国機密』では、司馬懿仲達とか曹操とか曹丕とか、双方に共通して登場する人物がいて、その描写に少なからず差異があって、「この人物の解釈はこちらが好みだ」とか比較して見るのも楽しいと思いました。特に両作品における司馬懿仲達のキャラ設定はまるで別物だったのですが、なんと『司馬懿~』と『三国機密』を書いた脚本家は同じということがわかり驚きました。
『三国機密』の司馬懿もクセになるイケメンだったけれど、私の中で司馬懿は永遠に「呉秀波さん」だと改めて確信しました。
まとめの感想
個人の印象ですが、このドラマ全体的にムンムンとした大人の熱量、性のエネルギーを感じます。胸キュン、じゃなくて圧倒的にねっとりした肉体的な熱さというか…
この熱量を上げている要因を考えてみると、
などなど、中国史劇としてはあけすけでオープンな性描写だと思います。異色。
登場人物の多くが命を散らす乱世という時代背景において、こうした性のエネルギー描写の効果として、キャラクターの生命力というか、生き抜こうという強かさをより際立たせているのではないでしょうか。
と、それっぽくまとめてしまいましたが、一点注意した方がいいと思ったのは、初めて三国志に触れるという人が、『三国機密』を見て「これが三国志」と認識してしまうと色々誤解を招きかねない、という懸念です。やはり横山光輝先生のマンガ『三国志』からスタートするのを推奨したいです。